SINCE
2002
田舎暮らしより、自然体暮らし
長野県 駒ヶ根の家 前編(家)
永住の地をみつけたい。それがどこかわからない。そんな人が多い。横浜出身の遊佐幸治さんは、たまたま転勤先が駒ヶ根で、環境が気に入り「そのまま居ついてしまった」。妻の千恵子さんも「ここは家族でなじむぞ」と直感。転勤1年後には3人の子どもたちを連れて引っ越してきた。
最初は社宅。いくつか検討してBESSのカントリーログハウス「クレスト」に決めた。
2003
空が広い。きつねの巣穴があったが、「どこかに引越したらしい。ちょっと悪いことしたな」と幸治さん。
周辺道路や下水道の整備もまだこれからだった。
(完成翌年の雑誌取材で撮影)
2024
環境が様変わり。アプローチができて樹も育ち、いい雰囲気。手前に建てたのは趣味のガレージ。バイパスからもアクセスしやすく、ご近所も増え、すっかり閑静な住宅地に。
「田舎暮らしに憧れはなかったです。来てみたら横浜より全然暮らしやすい……いや、暮らしたかった、かな」(幸治さん)
もしかしたら人生を導くのは、計画や気負いではなく、感性や自然体なのかもしれない。遊佐さん夫婦の話を聞いて、そんな気がしてきた。
人に依存するから、おもしろい
遊佐家で驚いたのは、古い車が7台も駐まっていたこと。「ポンコツばっかり」と千恵子さんは笑うが「いや、お宝だと思う」と幸治さんは誇らしげ。無類の車好き。ルパン3世に登場する1968代型FIATチンクエチェントなど、主に往年の欧州車が並ぶ。
新しいものには興味がないという。どこが魅力なんだろう。「やっぱりおもしろいんですよ。メカが凝ってないぶん、人に依存する、使いこなす愉しみがあって。そこはこの家にも通じると思います」
「都会にいると、いろいろなものをお金を出して買いがちだけれども、当然のように暮らしの多くのところを自分で手を動かしてやるんです」(幸治さん)
「ふたりとも手をかけることが性に合ってますね」(千恵子さん)
ログだって、普通に愉しめばいい
カントリーログハウスだからといってカントリー風に暮らすつもりはなかった。遊佐家にとって、あくまで自分たちらしさが理想だった。
いかにもログハウスらしい薪ストーブもそう。家の大事な一部のものに違いないが、特別ではなく、暮らしに根づいたもの。20年以上、ずっと。
20年以上暮らしてみて、この家は、遊佐さんにとってどんな存在なんだろう。
「“木の洞(うろ)”かもしれない。動物が木に穴を空けて自然に暮らしている、あの感じ」(千恵子さん)
「そういう拠り所でもあるし、大事な道具。だから…」幸治さんはつづけた。
「構えずにラフに使って、ざっくばらんにログを愉しめばいい。時間が経つほど愛着が深くなるものです」
経年愉化って無理やりじゃない。やっぱり自然体なんですね。