時間を眺めに 経年愉化の家

SINCE
2002

子は、いずれ巣立つ

長野県 駒ヶ根の家 後編(家族)

家族は何をもってつながるのだろう。同じ屋根の下バラバラな家族もあれば、遠く離れても仲良くつながる家族もある。

2002年、遊佐幸治さんはBESSの家に家族5人で暮らしはじめた。20余年が過ぎた2024年、妻の千恵子さんのほぼ一人暮らしだ。みんな、どこへ行った?

赤い屋根のカントリーログハウス「クレスト」。晴れた日には中央アルプスと南アルプスが眺められる、絶好のロケーション。きょうの風見鶏はどこを向く?

子どもは3人。上の姉は大学進学のため3年半で家を出て、下の兄妹も首都圏の大学へ。「わりとみんな一斉にいなくなったような気がするな」と語る幸治さん自身、駒ヶ根での会社員時代や起業を経て、現在は東京での単身赴任が続く。
「なんか夫婦二人だけでいた感じがほとんどないよね」と千恵子さん。

では、遊佐家は何をもってつながってきたのだろう。

家の完成3年後。奥で父の膝にちょこんと座る末っ子の妹。兄は望遠鏡と。兄妹はまだ小学生。(高3の姉はお出かけ中)

それから7年、妹は高1、兄は高3 に。姉の大学進学後しばらくは4人暮らし。

夫婦は60代になり孫ができた(隣町に住む姉の子)。 完成時7歳だった妹も大人の女性に。手仕事の物が増え、家の様子にも変化が。

ふらっと来て、ふらっと去る

子どもたちが独立して10年以上になるけれど、子ども部屋は暮らしていた当時のまま。「ふらっと帰ってきて、またふらっとどこかへ行っちゃう」という。遠くへ近くへ、ちょくちょく飛び立っては帰ってくる。鳥の帰巣本能のようだ。

大人になると、子ども部屋はタイムマシーンになる。そこで過去と現在の時間の流れが交差し、違った居心地や愉しみが生まれるのかもしれない。

部屋への愛着だけでなく、「ふらっと」自由に出たり入ったりできる自然体の軽みが、離れても遊佐家がつながっている大きな秘訣なのだろう。

(左)新築時、子ども部屋にできる複数個室のプランを選択し、ロフトを広く変更して仕事場に。天窓は1つ。
(右)暮らしはじめてから1階が暗く感じたので、天窓を1つ増やした。

ざっくばらんな雰囲気は家族以外も惹き寄せる。「たまに知らない子が居間でスヤスヤ寝てて」(千恵子さん)「だれ?みたいな」(幸治さん)聞いたら、子どもの友だちだった。のどかな土地柄だから?なんともおおらかなBESSの家らしい出来事。

ジャングルジム気分のログハウスなら、のびのび遊び放題。素足が気持ちいいね。
壁には千恵子さん撮影の写真が年々増えてきた。

家族が変わっても、平気な家

幸治さんの東京での仕事は、近い将来リモートワークにできる予定だ。「ぼくは単身赴任をやめて、家に早く帰ってくることが愉しみなんです」

家族が、いまのまま永遠なんてない。家を建てて10年もたてば、子どもは巣立つ。夫婦もおたがい歳を重ねていく。働き方が変われば、家族関係も変わる。

そんな暮らしの変化を受けとめながら10年、30年、50年と愉しみが増えていく家がいいなあ。そうなれれば……。

ほら、こんなふうに、新しい命に愉しみが伝わっていく。

駒ヶ根の家の前編はこちら
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