これか!愉化

​​経年とは進化。
年を重ねて自分の“好き”も強くなる

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甲斐みのり

時間が生む独特の風合いや深みを愛する人にとって、経年劣化はむしろ「経年愉化」。

この番組では、経年をポジティブに受け止め、自分だけの楽しみ方を見つけている人を訪ねます。

今回は、古本や雑貨など、自分がときめくものに愛着を持って集めている文筆家の甲斐みのりさんにお話を伺いました。「傷や汚れこそが輝いて見える」と語る甲斐さんが考える経年の面白さを探っていきます!

\ 本編はYouTubeにてお楽しみください! /

幼い頃のいたずら書きもその時にしか刻めない宝物

落書きや汚れがそのまま残った絵本は今も変わらずお気に入りの一冊。

アトリエの壁一面に並ぶ本の中には、子どもの頃に愛読していた絵本などもあります。パラパラとめくってみると、当時の落書きや染みなどがそのままになっているのがいいんですよね。
「自分も絵本の中の家に入り込みたい!」という気持ちで、家の周りをボールペンでぐちゃぐちゃと落書きしていた古い記憶も今でも思い出します。紙の汚れや染みにも、持ち続けてきたからこその時の重なりみたいなものを感じて、すごく愛おしく思います。

世代を超えて受け継がれる双子のワンピース

修理したりクリーニングに出しながら大切にしているワンピース。

私が高校生くらいの時に母のクローゼットで運命的に出合ったこのワンピース。祖父が母のために生地から仕立てたオンリーワンの洋服で、母が捨てずにずっと大事にしていた服を、今は私が受け継いでいます。若い頃の母がこのワンピースを着ている写真を見たことがあるんですが、私が見たことのない嬉しそうな母の姿がとても印象的だったんですよね。これを着ると、当時の母の嬉しい気持ちみたいなものが乗り移ってくる気がします。

年を重ねるごとに
“自分らしさ”が増えて進化していく

「ボタンが取れていたり汚れていても、他にはない輝きを放っているんです」と甲斐さん。

若い頃は見た目のかわいらしさに惹かれていたのですが、今はその物に宿る物語を大事にしている気がします。年を重ねて物と自分が共に成長してる感じが、自分たちに厚みが出てくるようで嬉しく感じています。私にとっては、経年することは劣化というよりも進化。衰えていくんじゃなくて、時を重ねてくことによってどんどんいろんなものが進化している。年を重ねることを物とともに自分自身も楽しんで、深みを増していきたいと思います。

甲斐みのり

文筆家

静岡県生まれ。雑貨の企画・イベントを行うブランド「Loule」主宰。旅、散歩、お菓子、地元パン®️、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍、雑誌、webなどに執筆。主な著書に『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』『日本全国 地元パン』(エクスナレッジ)、『「すきノート」のつくりかた』(PHP研究所)『旅のたのしみ』『気持ちが伝わるおいしい贈りもの』(ミルブックス)ほか多数。最新刊は『旅のたのしみ』(mille books)。

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