おおらかな木の家には
人の生き方を変えるチカラがある(ような気がする)。
そこで、木の家に住んでいる人にこんな質問を。
「木の家に住む前と、住んでいる今。
なにか、変わりました?」
床に刻まれた傷も、壁の釘跡も、嫌じゃない
秋田県
Iさんご家族 後編
Iさんご家族
ご主人、奥さん、長女(高2)、長男(中3)、次男(小2)の5人暮らし。
ご主人は、フリーランスフォトグラファーでありデザイナー。自宅を仕事スペースとしても活用する。2年前にマイクロバスのキャンピングカーを手に入れ、休日は家族で車中泊。冬は、スキーやスノーボードを楽しむ。
「きのいえ以前。結婚したばかりで、夫婦ふたりぐらしでした」
高2の娘さんと同い年の木の家。現在ではきょうだい3人、5人家族で暮らし、10年前からは家がIさんの仕事場も兼ねています。どのように空間を使っていますか?
基本は、寝室ひと部屋と風呂トイレ以外は壁で仕切らず、そのときどきに合わせて自由に使っています。
今は、2階の窓際と1階の土間が、僕の仕事や打ち合わせのスペース。2階のロフトを、高2の長女と中3の長男が2段ベッドで分け合っています。小2の次男は、僕ら夫婦と一緒のベッド。結局、壁で仕切らずにシンプルな空間のまま、ここまでやってきました。
「きのいえ以後。子どもたちは大人が集う家に育ちました」
吹き抜けの気持ちよさも相まって、家のどこにいても家族の気配を感じます。おおらかな空間で育ったお子さんたちの様子はいかがですか?
子どもたち3人は、成長してもずっと仲がいいですね。今では上の2人が部活で夜遅くなる日もあり、時間が合わないことも増えましたが、3人でカードゲームに熱中していることもありますよ。そこに、僕ら夫婦も混じって遊んだり。なるべく家族で過ごすことを大切にしているので、顔を合わせてひとつの物事で楽しむのが当たり前になっています。
家族が集まるのは、1階のリビングスペースが中心です。晩ごはんが遅くなる日もあるけれど、なるべく時間を合わせて、「今日一日なにがあった?」と話します。朝ごはんは、今も必ずみんなで囲みますね。
壁などの仕切りは最小限ですが、家で仕事をするときや、来客があるときはどうしていますか?
基本的には、子どもが帰ってくる時間に合わせて、一旦仕事を切り上げています。やむをえず残業する場合は、みんなが寝るまでは電気を消して、再開するときもひっそりと(笑)。
打ち合わせ中、子どもたちは空気を読んでか、とくに話しかけてこないですね。家を仕事場にする前から、来客は多いほうなんです。酒どころということもあって、友人と家で呑む機会も多くて。
壁などの間仕切りがないワンルームのような家なので、子どもたちは物心ついた頃から、1階にワイワイと人が集まっているのが当たり前。だから、僕が打ち合わせをしている光景も、友人たちと飲んでいる様子も、当たり前のものとして目に入っているんじゃないでしょうか。この家は、子どもと大人が垣根なく関わる時間が長い家だと思います。
思えば、僕の実家もお寺で、大人との距離が近い家だったんですよね。シンプルな木の家が、性別や年齢をこえたコミュニケーションを生んでくれていると感じます。
「きのいえ以後。床に刻まれた傷も、壁の釘跡も、嫌じゃない」
子どもたちの成長とともに、家も歴史を刻んできました。木の家でよかったことは?
やっぱり、傷や汚れも味に変わるところでしょうか。
とくに床。この家で暮らし始めて裸足の気持ちよさを知ったのですが、家族がよく歩く動線も見えます。
床に子どもたちがつけた傷も、よい思い出です。長男は幼い頃、映画『カーズ』が大好きで、ミニカーで映画のシーンを再現して遊んでいたんです。その傷は消えないけれど、むしろ嫌じゃないんですよね。
「傷がついても嫌じゃない」って、スゴいことだと思います。
もともと木の家にした理由の一つに、傷も味になっていくということがあって。
壁に釘を打って、抜いたとしても、跡が悪目立ちしません。むしろ17年という月日で、全体的にアンティークのような味わいが生まれているような? 今までの家族の日々が残っている、という感覚なんです。
メンテナンスはしていますか?
あまり気にしすぎず、ときどきオイルを塗るぐらい。でも、そういう手間ひまも含めて、木の家はたのしいんですよね。これからも家族のその時々に合わせて、内装をいじってゆくのも楽しみです。