Vol.16

外は内で、内は外?

この春3人めの子供が生まれました。さすがに今のアパートでは手狭になったところに、上の子(小学4年生)が自分の部屋が欲しいなんて言い出しました。とにかく部屋数の多い家をと、住宅展示場を回っている中でBESSの展示場に行き当たりました。なんとまあもったいない、大屋根の下にひと部屋分もあろうかと思われるデッキがどんと突き出ていました。この大胆な無駄使いは何?頭がクラクラしました。この日本の住宅事情において、いったい何を考えて設計しているのですが?

BIGFOOTBOY

「善は急げ」―「急がば回れ」、「人を見たら泥棒と思え」―「渡る世間は鬼はなし」、右に左に、ことわざの振れ幅が(昔から変わらぬ)世の中の複雑さを教えてくれるけど、見回せばさすが世界のシェークスピア、ズバリひと言で言い表した「いいは悪いで、悪いはいい」(マクベス)に(なら)って言うと、「外は内で、内は外」――この曖昧にして大胆な潔さが、BESSのデッキの真骨頂かな。絶対的な善や美なんてない、すべては相対的。そんな価値観を表した「マクベス」劇の台詞(せりふ)の底ににじむ諸行無常感、春は花、夏は夕風、秋は月、冬は雪、季節の移ろいの中でその時々の暮らしの楽しみを味わう。外も内もない。OPENもCLOSEDもない。大きなパティオドアでつながった、屋根のかかったデッキはもうひとつのリビング。自然のリズムとともに、ゆったりした時間が流れている。右か左か、黒か白か、勝ちか負けか(引き分けはなし)――論理的決着を求められるデジタルな毎日の中で、“曖昧”という(現代社会が忘れ去ろうとしている)もうひとつの価値観がたゆたう心地いい世界。〇LDK、坪単価、そんな効率目線の勘定から(はじ)き出される文字通りのはみ出しモノだけど、はみ出しモノにははみ出しモノならではの楽しさや気楽さがあるんだよね。

部屋はなくても子は育つ。だけどどうしてもというなら、思い切ってデッキを子供部屋にしたら?引きこもりにはなりようもないし、自然に囲まれて情緒豊かな人間に育つと思うよ。ただしあんまりのびのびしすぎて、(おいらみたいに)はみ出しモノになっても、責任は持てないけどね。

「吐露byBESS」
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