Vol.3 / 商品開発 チーフデザイナー

山中 祐一郎

建築家として活動すると同時に、BESSのすべての商品開発に携わる。

「かっこいい」よりも、
「楽しい」とか「心が豊かになる」とか。
それが大事ですね。

そういう気持ちはずっと自分の中にあって、BESSと出会ったことでそれが表現できるようになった。デザイナーとしての新しいチャンネルを開いてもらったと思っています。

  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア

流行よりも、考え方を大切にしたかった。

BESSとの出会いは、2001年ごろ。ワンダーデバイスを開発するというタイミングで声をかけてもらったんです。まだ20代でそれほど実績も積んでいませんでした。僕はいわゆる流行を追いかけるタイプの建築家ではなく、どちらかというと「丁寧にものづくりをしたい」「ものをつくるときの考え方やストーリーを大切にしたい」というほうで。もしかしたらそのあたりに、BESSと通じるところを感じてくれたのかもしれませんね。

あえて、やわらかくするんです。

もともと自分がやっている建築の仕事は、BESSとは全然ちがうんです。もう少しデザイン的な「モノ」として突き詰めているというか。BESSのほうは「モノ」というより、「コト」として突き詰める。その家のデザイン以上に、その家があるとより楽しいとか、心が豊かになるとか。そういうほうがBESSにとっては大事なんです。
だからモノとしては、いったん突き詰めた後、「刃落とし」と呼んでいるですが、あえて抜けや遊びをつくってやわらかくするんです。おおらかさをつくり、いろんな人がいろんなレベルで寄ってこられるものにする。そうやって、価値観の近い人たちには共感してもらえるようにつくっているところがあります。

予測がつかないから、面白い。

車や電車で遠くまで出かけて、そこでBESSの家を見つけると「おおっ」と思います。自分の知らないところで、自分たちのつくったものが、知らない人のための家として活躍しているというのがデザイナーとしては面白いんです。BESS以外の仕事では、特定のクライアントのために、一品ものの注文住宅をつくることが多いですから。
BESSはユーザーのレベルが高くて、僕たちがイメージしている以上の生活を実践してくれていることもあります。「プロの生活者」みたいな方がいるので、そういう達人たちが楽しんでくれている様子に出会うとうれしいですし、大いに刺激を受けますね。

「おおらか」の重要さに、気づきました。

BESSと長年いっしょにやっていると、僕自身やっぱり影響を受けます。ものづくりや暮らしにおいて、おおらかさがいかに重要かということに気づかされました。たとえば、壁にちょっとしたキズが入ることで神経まで削られてしまうのは、つまらないことだと思うんです。
空間自体がおおらかにできていて、ちょっとしたキズや汚れなんて気にせず、リラックスして過ごせるほうが精神的に健康ですよね。BESSはその点で突き抜けていてユーザーとも価値観を共有できているから、お互いにハッピーでいられるんだと思います。

塩ラーメンのログハウス!?

社長の価値観がとても独特で、アールシーコア本社ビルのデザイン時のオーダーは、「ドレスアップではなく、ドレスダウンせよ」でした。「豚骨でもなく味噌でもなく、塩ラーメンのログハウスを提案してほしい」と言われたこともあります(笑)。
ワンダーデバイスのときも、常識的な建築デザインの世界ではタブー視される「看板建築」のアイデアを社長が持ち出したことで、強いコンセプトが出来あがりました。すごく独特な感性の人ですが、とにかくその判断基準は一貫しているんですよね。最初はびっくりする発言も、最後には納得させられたり。このお付き合いは、もう楽しみのひとつになっています。

展示場の常識、変えました。

2013年に藤沢の展示場をつくったときに、それまでの展示場のあり方をガラッと変えたんです。展示場を一つの集落に見立て、そこにはまっすぐな道はなく、建物も自由な方向を向いている。きれいに区画整理されて窮屈になる街を良い意味で壊し、オルタナティブな価値観や暮らしの楽しさを提示するような、そういう方向にシフトしたんです。今では全国の展示場もその方式に変わってきていて、いい変化だと思います。でも、ここからまたさらに新しい進化も仕掛けていくかもしれません。BESSは立ち止まりませんから(笑)。

いろいろ「アーキテクチャ」しています。

建築だけでなく、家具やインテリア、イベントや舞台演出などいろいろなデザインに携わっていて、実はITの会社も経営しています。僕にとってそれはぜんぶ「アーキテクチャ(建築行為)」なんです。ふつう「建築」と訳される「アーキテクチャ」ですが、英語での原意は日本語の「構築」の意味のほうが近いと思っていて。だからアウトプットが建築物だけでなく、家具やスマホアプリになったり、建築行為として会社を組織するということもありうると思うんです。BESSでやっていることとは全然ちがいますが、根っこは同じです。まあ、変人扱いされますけど(笑)。

旅人だった時代があります。

大学を卒業後にイギリスに留学していて、ユーラシア大陸を横断して帰国しました。それが自分の中でとても大きな経験でした。何千kmと移動していけば、気候が変わって雨量も変わる。それによって、例えば同じ収穫後の稲わらでも置かれ方や扱われ方がどんどん変わっていくんです。デザイナーが何かをつくる仕事だとすれば、つくられる環境や背景にある意味を大切にしなければいけない。今でもずっと意識しているスタンスで、BESSの家づくりにも通ずるところがありますね。