Vol.40

罪なビールジョッキ

先日、高校時代の友人にバーベキューパーティに呼ばれ、懐かしい仲間たちと再会しました。その友人、高校時代はどちらかといえば内向的で、人を招いたりするタイプではなかったんですが、久しぶりに会うと、性格が変わったようにおおらかになっていて、趣味も多彩で、とても楽しそうでした。「変わったな、どうしたの?」と訊くと、ナゾをかけるように「家がな」とニヤリと笑いました。聞けば、BESSの家とのことでした。どういうことでしょうか?

BIGFOOTBOY

 世の中にはいろんなお仕置きがあるんだろうけど、たとえば、「はい、これ持ってて」って言われて、渡されたのが大きな空のビールジョッキ。厚手のガラス製で、手首にかかる重さも心地よく、取っ手の握りもしっくりくる。時刻(とき)は真夏の夕方。時折り夕風が頬を撫でるけど、まだまだムッとする暑さが身を包む。グッとやるにはもってこいの頃合い。(あかね)色の陽を受けて、ジョッキのガラスがキラキラ光る。目に浮かぶのは、絶妙のバランスで境界をなす白い泡と黄金の液体。ホップの香りまで鼻をくすぐって、喉仏が空しく上下する。瓶でも缶でもピッチャーでも何でもいいから、とにかく早くジョッキを満たしてくれ!耳の奥では、トシュワシュワっと、おいしい音が渦巻いている。だけど、待てど暮らせど、肝腎の“命の水”が注がれる気配もない・・・おいらの気持ちをこんなに掻き乱して、あゝ、罪なビールジョッキよ!
 こんな気持ちって、古今、共通みたい。「徒然草」(一五七段)も言っている、「筆をとれば物書かれ、楽器をとれば()をたてんと思ふ」なるほど。「(さかずき)をとれば酒を思ひ、(さい)をとれば()打たん事を思ふ」その通り!「心は必ず事に触れて(きた)る」ってね。空のジョッキがおいらのビール心を掻き立てたのも、むべなるかな、だね。
 それでいけば、家っていうのは、触れるどころの話じゃない。まさか家を舐める人は(そんなに)いないだろうから、味覚を除いて、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、そしてきっと第六感まで、フルでどっぷり住人と交感―BESSの家だったら、木目のゆらぎや木の香り、まろやかな音、木肌のぬくもり・・・そんな木の美味(おい)しい(あっ、味覚!)恵みに囲まれた大空間や、開放的な吹き抜け、外とつながるデッキ、土足もOKの土間・・・自然いっぱいのおおらかな家に暮らしていると、(筆を持てば何か書きたくなって、楽器を持てば演奏したくなるように)自然にDIYや土いじり、仲間を呼んでバーベキューをしたくなるんじゃないかな。そのうち性格も変わってくる。ていうか、(しがらみ)や世間体という固い土に埋もれていた“もうひとつの心”が、BESSの家との交感、じゃなくて、交を通じて、むくむくと芽を出してくる、兼好法師に(なら)えば「心は必ず家に暮らして(きた)る」ってとこかな。高校時代の友達も、もしかしたらそんなことかも。

・・・そう言ってる間に、あ~、もう手がしびれてきた。パーティ盛り上がったみたいだけど、おいらにも早くビール注いでよ!

「吐露byBESS」
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